水気耕栽培(噴霧水耕栽培)装置を自作する方法を紹介します。
- 水耕栽培は夏がキツイ
- 植物の生育が悪い気がする
- 原因は、溶存酸素か…?
- 溶存酸素がたっぷりな栽培をしたい
- 噴霧水耕にしよう
ということで、庭で出来る噴霧水耕装置を自作しました。
噴霧水耕ってなんやねん…となるかもしれませんが、
安く作れて、電気代も安くて、いい感じの装置になるんじゃないかなという感じ。
簡単に作れる装置だから、「水耕栽培に興味がある」とか、「真似しやすい家庭菜園をしたい」みたいな方のお役に立てれば嬉しい!
それでは、作り方を含めて、以下で紹介していきたいと思います。
目次
エアロポニックスとは
養液栽培の一種。です。
もう、意味が分からなくなるかもしれませんが、10行くらいで説明するのでお付き合いください。
「水耕栽培」をイメージすると、次のような感じじゃないかなぁと思います。
- 土を使わない
- 根っこが水に浸かってる
- 植物工場とかでも使われる栽培方法
今回の「エアロポニックス」も水耕栽培の1つなんですが、
植物の根を空中に浮かせておいて、水を根っこに吹き付けることで栽培する方式です。
水気耕栽培とか、噴霧栽培とも呼ばれます。
噴霧水耕の特徴としては、根っこが水に浸かっていないから、より多くの酸素が根に取り込めることが一番の特徴じゃないかなと思ってます。
ちなみに、普段やっている栽培とは違う方式で、それぞれにメリット・デメリットがあります。
家庭菜園を本気出して2年目。
農地を持ってないし、
農家の登録?もされてないから、
文字通り家庭菜園なんだけど…
パッと見、植物工場らしくなってきた!
(よね!?)
全て、ホームセンターとAmazonを駆使しております。 pic.twitter.com/1943AB3fjZ— 悠々@小屋暮らし準備中 (@nadehisashi) 2017年6月3日
エアロポニックスのメリット・デメリット
さくっと、メリット・デメリットを紹介します。
メリット
- 装置が軽い=作りやすい
- 水が少なくて済む
- 溶存酸素たっぷりで植物の生育が良い
水をたくさんためることがないから、軽い栽培装置でOK。自作レベルの装置で全然問題なく使えます。
そして、溶存酸素たっぷりで植物の栽培に適している栽培ということです。
デメリット
- 養液濃度が変化しやすい
- 水温が変化しやすい
- 電気が止まったら、植物に大ダメージ
水が少ないということは、周りの環境の影響を受けやすくなります。
暑くなるとすぐに、水温が上がったりとか、栽培環境の変動が激しく、管理が難しくなります。
また、電気が止まると、根に水が供給されなくなるため、停電時にリスクが高い栽培方法です。
なぜ、エアロポニックスを採用するのか
あえて、デメリットを強く推したので、わざわざエアロポニックスにする必要なんてなくない?と考えたかもしれません。
それでも実験したいなと思う理由は、夏場の酷暑です。
植物の根っこは酸素が大好きなんですが、水は暑くなると酸素が溶けにくくなります。
特に最近の夏は酷暑なので、水の中に酸素が少ない。
根っこは酸素不足なんです。多分。
すると、植物の生長が悪くなります。
悪くなるだけならまだしも、枯れてしまったりすると、非常に悲しくなります。
ということで、夏場の溶存酸素対策として、エアロポニックスの装置を作ってみました。
エアロポニックス装置の作成風景
いつも通り、写真多めでサクッと紹介します。
用意したもの
まず、用意したものは次の通り。
- 杉の野地板
- 垂木
- 発泡スチロールの板
- 長いビニール(ビニールハウス用のビニールがオススメ)
- 12Vのポンプ、ACアダプター
- 噴霧ノズル等のセット
色々な材料がありますが、最低限必要な物はポンプ&噴霧ノズルのみ。
後は、水を貯める容器があればOKです。
作成風景
それでは、作業風景の紹介です。
完成のイメージは、
木で作った容器にビニールを張って、プールを作る。そこにポンプと噴霧ノズルを設置するというものです。
1.木で容器を作る
僕の場合はすでに作ってしまっているんですが、木で湯舟のような容器を作ります。
木を使わなくても、衣装ケースなどを流用してもOK。とにかく幅と奥行きがあって、水が漏れないものを選びましょう。
特にエアロポニックスの栽培装置の場合は、中に水が少ないので、強度もそこまで求める必要はありません。
▼木の板を組み合わせます。底の板を作り、サイドの板を取り付けます。
▼クギよりも、木ネジを電動ドライバーで締める方が楽です。特に、解体予定がある場合はネジを使うことをオススメ!
▼発泡スチロールを敷き詰めます。
この後でビニールを敷くんですが、木のベッドに敷いてしまうと穴が開いてしまいそうだからです。
▼底面だけでなく、側面にも発泡スチロールを入れます。
▼ビニールを敷きます。これで水を入れても大丈夫。
▼長くて、安くて、穴が無いビニールは、ビニールハウス用を流用するのがオススメ。
田舎ではホームセンターで売っていたり、農業用品の店で手に入ります。
なぜ、木を使ったかというと、安いから。
小さいものであれば、衣装ケースやコンテナBOXで大丈夫。
でも、大きいものを作る場合は、杉の野地板&垂木に木ネジで作るのが、安くて簡単。
デカいものを作りたい場合は木がオススメ。
2.動力部分の作成
噴霧式の名前の通り、栄養が入った水を霧にして、植物の根っこに噴射します。
ということで、ポンプと噴霧ノズルを装着していきます。
ポンプは12Vで3Wの物を使用しました。
▼12Vのポンプを使います。300mAの消費電力で1分間に4リットルも送水できるらしい。
これに、噴霧ノズルを装着します。
中国製のものであれば、ノズルが25個入って、アクリルホースも15m入って、2000円未満でした。
圧倒的に安くて、オススメ。僕自身も使っていますが、問題はなさそうです。
▼この後、苗を植えるのは6か所を予定。そのため、苗の根本にノズルが来るよう、設置しました。
▼ノズルを固定します。
VVFケーブルという、屋内配線に使う電線を使うと、良い感じに固定できました。
中に銅の線が入っているから、手で曲げられるし、固定も簡単だし、オススメ。
固定が出来れば、上に蓋をつけて完成。
これは、発泡スチロールの板に穴をあけているものです。
ホームセンターで「スタイロフォーム」下さいといえば、紹介してもらえるはず!
穴をあけて、苗を置けば、いつでも植物が育てられます。
噴霧型水耕で作物を育てる
植物が育ってなんぼです。これからいろいろな作物を育ててみたいと思います。
ゴーヤ
2018年のお盆過ぎ、ホームセンターにゴーヤが残っているのを見つけて買ってみました。
植える時期は遥かに遅いと思うけど、どれだけ育つのか実験。
▼噴霧ノズルは各苗の根本に設置。根っこに霧がかかるようになっています。
▼1週間後には、根っこが激しく生えました。
この激しい根が湿気中根(しっきちゅうこん)と呼ばれる根。
養液に浸っていなくて、高湿度中の環境で出てくる根っこで、効率が良い根だと言われています。
成長の詳細は以下の記事で紹介しています。
注意点
実際に装置を使ってみて、注意する点をまとめます。
ノズルの固定
ノズルの固定はしっかりしておくべきです。
というのも、ノズルがズレてしまい、根に噴霧が当たらないと、すぐに根はしおれてします。
僕も失敗しました。
ということで、常に根に霧が吹きつけられるよう、ノズルを固定しておきましょう。
EC(養液濃度)
液肥濃度にも注意が必要。
根が水に浸かるような栽培方法とは違って、噴霧式で育てる場合は薄い液肥を使います。
ECで言えば、700くらいで十分。
根を水につけて、エアレーションをする…みたいな場合は1200くらいでしょうか。
根が効率よく吸収できる分、液肥は薄くてもよさそうです。
噴霧ノズルの詰まり対策
噴霧ノズルは小さな穴が開いているという単純な構造。
小さなゴミが流れてくると、すぐに詰まって動かなくなってしまいます。
ということで、詰まり対策が必須。
僕は、ポンプ回りに対策を施しています。
ポンプ周辺にプラ容器を置き、その容器を不織布で覆っています。
プラ容器には小さな穴が開いていて、中に水を通すようになっています。
プラ容器を置く理由は空間を確保するため。
ポンプを直接不織布で覆ってしまうと、水の吸込みが悪くなり、ポンプに負担がかかってしまいます。
だから、ポンプ周辺には空間を残すようにするため、プラ容器を設置しています。
噴霧ノズルが詰まってしまったら?
それでも、噴霧ノズルが詰まってしまうことがあります。
その場合はブローを使うと、お手軽に修復できます。
- 水洗いする
- 噴霧の逆方向から、ブローを吹きゴミを逆流、吹き飛ばす
- 噴霧の順方向からブローを吹き、正常に動くか確認
▼まず、ノズル周辺のゴミ、中のゴミも水で適当に洗い流します。
▼ノズルの逆側からエアーを吹いて、ゴミを吹き飛ばします。逆噴射させる感じ。
▼ノズルが正常に動くか確認。中に少し水を貯めて、エアーを吹くことで、噴霧できればOK。
中に入った少量の水が、細かくなって出てきたら、成功です。
このノズルを、再度取り付けるとうまく動くはず。
上のブロー、めっちゃ便利だから、ちょっと宣伝。
このブローは、圧縮エアが出せるタイプ。
普通のブローよりも、ちょっと強い力で飛ばせるから、結構便利です。
発展性
簡単に作れる装置で、維持も簡単なため、色々と発展させられるんじゃないかと思います。
1.ソーラーパネル&バッテリー駆動
今回使ったポンプは、DC12Vで消費電力は3Wです。
ここまで省エネであれば、バッテリーとソーラーパネルで十分動くはず。
ということは、電気が無い場所でも育てられます。
そして、水も少なくて済むから、電気も水道もない場所で栽培できるかもしれません。
2.自動化
水位センサー&リレーを使うことで、水が減ったら、自動で投入できるだろうし、
他にも、Arduinoと組合せることで、自動で植物を育てることができそう。
プログラミングが出来なくても、水位センサーでの自動化は簡単にできます。
以下の記事で紹介しているので、どうぞ!
3.徒長防止
植物の茎と茎の間が、びよーんと伸びてしまうことを徒長といいます。
徒長してしまうと、植物が弱くなってしまうので、育てる人は徒長させたくありません。
徒長を防止する方法として、夜間の水を減らすのが効果的です。
ということで、タイマーを使うことで、夜間の水を減らしたり…なんかも簡単にできます。
まとめ
噴霧式水耕栽培をするための装置の作り方などを紹介しました。
- 噴霧式水耕栽培は溶存酸素たっぷりで効率よく育てられそう
- 作り方も簡単に紹介した
- 小さいポンプで省エネ
- 発展性もありそう
装置が安く作れ、植物が効率よく育ち、管理も簡単、自動化の発展性もある…
ということで、まるで詐欺のような良いことずくし。
僕にとってもまだまだ実験段階ですが、面白くなったらいいなぁと思います。
これから結果も随時更新していく予定。
作ってみてください!
悠々さん、こんばんは。
最近はどうしているのかな?と思っていたところでしたが・・・今度はこんなすごいことを・・・!!
毎回驚かされます。そして今回も濃い記事ですね~(自分が書く記事の薄さが恥ずかしいいw)。こんな栽培方法があることも知りませんでした。
自分はまだなかなか踏み切れない領域ですが、自分もいつかやってみたいな!と刺激されます。
元気よく育つと良いですね。続報も楽しみにしてます!(^^♪
毎度コメントありがとうございます。
プログラミングと奮闘して、ついブログから離れてしまっておりました^^;
そう言って頂ければ、嬉しいです。
言葉的に破綻してるところもあったり、伝わらないところもたくさんありますが
既に200記事を超えたから、経験だけは出てきたのでしょうか(笑)
ありがとうございます!
また続報と、もっと気軽に育てられる方法の公開を目指してますー♪
悠々さま、はじめまして!
大変有益な情報をいつもありがとうございます。
私も水耕栽培に興味を持ち、自作の栽培槽を作ってみたいと思い
種々準備を進めています。
記事を拝読させていただき確認したいことがありました。
・容器の深さはどのくらいがよろしいでしょうか?
レタスやしそ、ハーブなどの葉物と、
ミニトマトやゴーヤなど実がなる野菜とでは
深さを変えたりすることはありますか?
・栽培槽ひとつで液肥を循環させているのでしょうか?
液肥を貯めておく槽を分けて用意しなくても大丈夫ですか?
以上、お伺いできましたらありがたいです。
よろしくお願いいたします。
ネネさん、こんにちは。
メールでの問い合わせも頂き、ありがとうございます。
内容が重複しているものもありますが、別の内容も書かれておりました。
メールは返信済ですが、内容をこちらでも記載しておきますね。
[メール内容]
悠々さま、はじめまして!
いつも有益な情報を共有いただきとても感謝しています。
ブログのコメント欄からメッセージを送信したのですが
表示されなかったためこちらから失礼いたします。
またコメントを受け付けていない設定になっている場合は大変申し訳ありません。
私も自作栽培槽を作ろうと準備中で悠々さまの記事はとても役立つもので
DIY好きの血が騒いでいます。
ふと気になったのですが、栽培槽の他に液肥槽も別に用意する必要があるのではないかと思ったのです。
初心者の疑問でお恥ずかしいのですが、
栽培槽の中の液肥をポンプで循環するのみでよかったですか?
記事には書かれていなかったのですが念のため確認したいと思いました。
ご面倒をお掛けして恐縮ですが、お時間のある時にご返事いただけましたらありがたいです。
また、水中ポンプの商品リンクがずっと売切れ状態のようですので、
あたらめてご紹介いただければそちらから購入したいので合わせてよろしくお願いいたします。
[メール&コメントの問い合わせ返信]
はじめまして。悠々と申します。
ブログへのコメント、問い合わせありがとうございます。
コメントとメールの内容、合わせて順番に回答させて頂きます。
【Q.液肥槽があるか?】
今回の栽培方法では、液肥だけの槽はありません。
水+液肥が合わさった、栽培槽のみです。
また、液肥を溶かした濃縮液を保管しておいて(ペットボトル等)
栽培槽の肥料濃度が、薄くなったら足していく運用をしています。
(このペットボトルを液肥槽と認識されていたら、すみません)
家庭でされる場合、この運用方法をすると、手間が少ないかと思います。
【Q.ポンプ循環でOK?】
OKです。
循環の有無は、色んな部分でメリットが非常に大きいので是非ともオススメします。
Amazonリンクについて、気を遣って頂き大変恐縮です。ズボラなもので、全然管理できておりません、すみません笑
https://amzn.to/3yedfSV
おそらく、記事ではこのポンプを使っていたはずです。
【Q.容器の深さは?】
容器の大きさによりますが、水深5cm以上で、ある程度の水量を確保しておいた方が良いと思います。
このように考える理由は、手間が少なくなるからです。
夏になると、かなり植物が水を吸う&蒸発します。
水が減りすぎると、植物にとっては致命的ですし、また人間が水を足す頻度が高まります。
自動で水を補充する仕組みで解決するのもありですが、初めからそこまで考えると、敷居が上がっちゃう気がします。
なので、ある程度な水量を確保しておいて、数日は何もせずとも大丈夫…みたいな環境を作るのは、如何でしょうか。
最後になりますが、コメントありがとうございました。
ブログで一人語りしていると、書ききれないことがたくさんあるので、
コメント等で聞いて頂けると助かります。
これからの季節、水耕栽培は楽しいのでDIYされるとすごく良いと思いますよ!
悠々
悠々さま、ご返事ありがとうございます!
メールはスパムフォルダに入ってしまっており確認が遅くなってしまいました。
重ねて丁寧なご返事をいただき感激しております。
こちらの記事では家庭菜園向けの小規模装置のご紹介でしたね。
液肥槽は別に用意しなくてOK、栽培槽ひとつで液肥をプールし循環させて運用する。
なるほどです!
当方のベランダでは、2mくらいの長さのものを2台設置してみようかなというイメージでおりました。
ポンプの給水能力が想像できないのですが、悠々さんご紹介の栽培槽は結構長さがありそうですね!
液肥のプール量は水深5cmくらいなイメージなのですね。
確かにあんまり水深が浅いとポンプが上手く動作できない気がします。
栽培槽のボリュームがありますと浅い水深とはいえそこそこの容量の液肥を溜めておくイメージですね。
ノズルやポンプの詰まり対策は必須だと思いました!
実際に運用されているプロの方の情報をお伺いできて大変嬉しいです。
リンクの更新もありがとうございました!
その後の状況もご報告できたらと思います。
ネネさん、お返事遅くなりました。
コメント返したと思ったのですが…上手く出来てなかったようです。
記憶が曖昧になっちゃってますが、ブログで紹介した栽培槽は5mくらいだったと思います。
事業としてミスト栽培を進めるなら、詰まり対策を何重にも行いますね!
現在は自動化関連に力を入れてますが、栽培のレベルアップもしたいとは重々考えています。
また、出来たときには紹介しますね!